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視界が開けた瞬間、輝く海が飛び込んでくる。空が夕日に焼ける直前。ブルーの空にピンクや紫が混じり始めるとき、海にまっすぐの道ができるように銀色に輝く。
「すげー綺麗…銀色に光る砂撒いたみたい」
言いながら、秀野の瞳も海を写して輝いていた。沈む太陽の色が鮮やかになり、オレンジや朱色に空が変わるにつれ、海の輝きも刻々と変わって行く。同じ表情は二度と見せない。
子供の頃から一人でここに来ては濃い藍になるまで海を見た。他人をつれて来たのは初めてのことだ。それが秀野で本当によかったと思えた。
「ここにね、何かある度来てひとりで海を眺めてたんだ。何度も。こーんな小さい時から」と胸の下で手を揺らす。「いつ来ても違う海で、違う光で、守られてるみたいだけど、閉ざされてるみたいで。負けない、ってさ、思ったりした。子供だよね。今ふたりで見たら単純に綺麗な景色だな」
昔から美しい景色だとは思っていたが、これほど明るい気持ちでこの海を見ることがあるとは自分でも思っていなかった。
「聖、見せてくれてありがとう」
目の前に広がるのは、もう閉ざされていると感じながら眺めた海ではない。どこまでも遠くへ、未来へ繋がっていると感じる。
ここから先、いいことしかないんじゃないかと思った。
「ううん。俺の方こそ、来てくれてありがとう。悦史とこの海が見れてよかった」
素直に気持ちを伝えると、秀野の夕日を映す瞳が優しく麻生に向けられた。
「聖のこと、俺、好きだよ」
何も答えることを求めていない言葉は、海風に流されていった。言葉の行く先を追いかけるように、幾つもの小さな島を浮かべ最後の輝きを見せる海へ向き直る。
とても綺麗な気持ちを秀野からもらったような気がして、麻生は隣にいる秀野の手を軽く握った。ふざけてじゃれあったりすることはあっても、気持ちを伝えるために秀野に触れたのは初めてだった。
握り返してきた手が温かく、胸の底から幸せな気持ちになった。
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