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「どこフラフラしてんだよ?なんのためにここにいるんだよ?!仕事だろ?」
「どこって、その辺散歩。麻生さんが、島歩けって言ったから。起こすの悪いと思って声かけなかったんだけど」
ガクッと本当に首をうなだれてしまった。手塚と自分は本当に相性が悪い。いろんな状況が重なっているにしても、ここまで直接的に感情をぶつけてしまう人間は手塚の他にはいない。
「帰ってきたら声かけろって、襖に貼っておいただろ?」
矛先をさらに変える自分がすでに嫌になっていた。襖?と疑問形でつぶやきながら、手塚が部屋の方に歩いていく。
「落ちてました」
ぺらっと指で摘んだ付箋を見せられ、またがっくりした。付箋は粘着力が弱い。それを貼ったのは自分だ。
「わかった。これからは出かけるときは俺に教えてくれ。いなかったりして声をかけられないときはメモ帳置いとくから、このテーブルの上にメッセージを残すこと」
「了解」
短い返事をして、手塚は洗面所に向かい、手洗いうがいをしている。がらがらがらと喉をゆすぐ音が聞こえる。体調管理の一環だと思うと、一方的に怒りをぶちまけた自分がますます恥ずかしくなった。
その日は別の島のロケ予定地を車で回った。橋の掛かっていない島という設定なので、連絡船の港などもうなくなってしまった場所や特別にその場所を使いたいからと選ばれた場所が島外にもいくつかある。
それぞれの地点で、どのシーンが撮影されるか説明していく。自分はロケ地選びには関わってないから予想でしかないけどと断って、描かれるであろう情景描写も加える。
何を言ってもお得意の『はぁ』で返されるので嫌になってくるが、クランクインまで時間がないから丁寧に説明を続けた。
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