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「何触ってんすか、麻生さん。金とりますよ?」
「なっ!…いや、いい体してるなって思って!だいぶ鍛えてるみたいだけど硬くなくて弾力があるっていうか…」
ぷっと手塚が吹いて、今までの険悪な空気と変な気分が同時に溶けた。
「ダンスはアスリートとかとは違う部分を鍛えるから。筋肉重くなると思ったように動けないでしょ。体ごつくてもカッコ悪いし」
「なるほどな。確かに見た目細身だよな。こんなちゃんとしてると思わなかった」
確認するように脇腹を掴んでみると、柔らかくも硬すぎもせず、しなやかに鍛えられたという感じがする。背中も触るとバランスよく筋肉がついていて、実際見たら綺麗なんだろうなと思った。
「あのね、こんな暗いとこで抱きつかれて体まさぐられたら、どれだけあんたに色気がなくても、俺ゲイなんで、変な気分になってくるんですよね」
「えっ?んんっ?」
ライブ中にメンバーにキスをした手塚が思い出され、抱きつくようになっていた手をパッと離す。ずずっと体が下方に滑って、もう一度抱きとめられた。
「ははっ、おもしれー。嘘ですよ。もし麻生さんが女でも全然ぐっとこないし」
「ハァァ?」
本気で笑っているのか、体が揺れる振動が伝わってくる。こいつが感情を見せるときは大抵ロクデモナイときだな!と今までの色々も忘れて憤る。
「重たいんですから、さっさと足場見つけて立ってくださいよ。俺今微妙なバランスで支えてるんで動けないんです」
やっと立ち位置を定め体が解放されて、すっかり夜道になったところを再び進み始めた。
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