06 三日目→四日目 / 手塚佳純side

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「さっきの景色、秀野さんと見たんですか?」 そんなこともどうでもいいのに、過ぎ行く光るラインの間を進みながら意地悪く尋ねる。 「……俺はロケハン行ってないから、あそこは初めて見た」 不自然に時間はかかったけれど、麻生にしてはいい返しだ。最後のロケ地に向かっているとき、麻生が心ここにあらずなのは気づいていた。秀野がらみなのだろうと簡単に予想がついた。 「あれ、カメラとか機材持って登るの大変そう。こんなドロドロになっちゃったし。どうして同じ島のもっとアクセスいいところで撮らないんだろう」 「秀野さんがあそこで撮りたかったからだろ?」 「ふーん、こだわりってやつですか。他の場所じゃだめなんでしょうね。あー、手のひら、痛いなー」 麻生の口元がわずかに引き攣ったのを手塚は見逃さず、わざと空気を変えるように子供っぽく言った。右の手のひらに細かい赤い筋が入って擦り切れていて実際痛んだが、仕事や生活に支障がない程度で本当によかった。 体が資本の仕事柄、自分のコンディションには常に気をつかっている。以前アクロバティックなダンスで足首を痛めた時、数日仕事に穴をあけたせいでさらに身に染みていた。 「悪かったな。救急セット持ってきてるから、帰ったら見せて」 「用意いいですね」 もう少しあからさまにつついていじめてもよかったけれど、手塚はそこで引いた。 山の中で自分はゲイだと言った時の麻生の反応が面白かったし、滅多に見られないという橋のライトアップが見られて気分を良くしていたからだ。
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