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 ログインのパスワードに続き、初期化をするための手続きが書いてあるが、どうやらLinuxのようで、確かに普通のパソコンしか使ったことがない人には難しかったかもしれない。私はなぜ谷さんが自殺する前に自分で初期化しなかったのか、ますます不思議に感じた。  「当日はどんな感じだったのでしょうか」  理由はわからないにしても、何か手がかりを知りたかった。  「いやぁ、近所の人はなんだか突然大きな叫び声を聞いたそうで、最初は強盗か何かが入ったのかと思ったそうだぃね」  「外を見たら弟が何かブツブツ言いながら川の方に歩いていったのだとか」  つまりは川への飛び込み自殺だったと。  遺族にあまり根掘り葉掘り聞くこともためらわれる。頃合いを見てパソコンの処理にかかることにした。    谷さんの自室は綺麗に片付けられていて、電源を入れると、ほどなくメモ通りの情報であっさりログインできた。ただし、初期化は素人には無理な注文というものだ。逆にそれをいいことに、我々は手際よく、谷川さんがこのマシンに何を仕込んでいたのかを探ることにした。もちろん会社に持ってゆけばゆっくりと隅から隅まで検証できるのだが、もし実兄が初期化さえしてもらえば処分は生前の言いつけ通りこちらで、と強く言い出せば手を出せなくなる。つまりは初期化をしているような振りをして素早く嗅ぎ回らねばならない。  操作は若い植木の方が速いので、彼にキーボードの前に座らせた。まずは我々の予想通り、谷さんがトラブル時にアクセスしていたIPアドレスがこのマシンであったことを確認した後、操作ログを拾い出させた。  「...最後はどこかのサーバーをシャットダウンしてますね」  「うちの関係か?」  「いえ、うちの関係はあらかた覚えてますが、見たことないアドレスです。」  「攻撃でもしてたのか?」  「ん~、そんな感じでもなさそうです。というかシャットダウンコマンドは一度タイプミスしてますね。なんか焦ってたんでしょうか。」  さらに植木は時間軸を遡ってゆく。  「あ、いや、なんか時間かけて大きなファイルをダウンロードしてますね。」  谷さんはいったいここで日々何をしていたんだろう。どこかの企業や国の機密を盗んで闇で売りさばくなどしていたのだろうか。  「映画...映画ですね」  「映画?」  「はい、ちょっと再生してみましょうか?」
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