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 「ど、どうしたんですか、お兄さん、半ば怒ってましたよ」  「証拠保全だ」  「いや、今回の件は内部の恥ということで事件化しないと決まったじゃないですか。とりあえず事実確認だけ我々がやって終わりだと」  「そんなもんじゃなくてな、一日八百万とかの損害じゃなくてな、谷さんはもっとすごいことやっちまったのかもしれないんだ」  「...航空会社ですか?」  そうつぶやいて植木も気がついたようだった。  「もしかしてシャットダウンさせたのはこないだ墜落した旅客機のシステム!? まさか、そんな、テロじゃないですか」  「まさか谷さんもそこまで悪人じゃないと思う、いや、思いたい。おまえ、なんか焦ってた跡があるって言ってたろ。あれ、うまくダウンロードができなくてイライラしたあげく再起動かけたんじゃないかと思う。  「えっと、ということは再起動コマンドのオプションを...」  「そう、本来は再起動なのに、イライラしたか、ミスしたかで-now(作者注:シャットダウンの指示。再起動は-rとなる)にした。」  「それ、無いわけじゃないですけど...」  植木と私は車をコンビニの駐車場に入れて、必死で推論を重ねた。  「というか、そんな簡単に再起動かけて大丈夫だと谷さんは思ったんでしょうか。」  「多分...、侵入したシステムは機内のエンタテイメントと乗客のWi-Fi接続用で、まさかフライトシステムまで含まれてるとは思わなかったんじゃないか」  「つまり、まさかそんな大事に至るとは思っても見なかったと?」  「恐らくは。俺たちでもたまにメンテに行き詰まったら最後の手段で再起動かけるだろ? 多分そんなノリで、一時的に機内で映画やゲームやネットが使えなくなっって、しばらくしたら元へ戻る、的に軽く考えたんじゃないか。」  「そしたら間違ってシャットダウンさせ、そのあと墜落のニュースを聞いて、あまりのショックに発作的に川に飛び込んだというわけですか?」  「確かあの事故じゃ200人以上亡くなってるだろ。機体も入れて数百億の損害だ。映画数本と引き換えにしたとなれば茫然自失も当たり前かもな。」
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