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 外に出ると、目眩がするくらいの熱気の中、時折強い風が吹いていた。  こう言う膠着状態の時、本当は敢えてこうして現場を離れて頭を洗い流した方がいいと私は経験的に思っている。修羅場と化したオフィスの連中には悪いが、バス停の簡単な腰掛けにもたれ、ペットボトルの蓋をひねった。    滅多にはないとはいえ、今日こけたシステムはたまに小トラブルを起こしていた。ただ、ぼんやりと夏場というか、ちょうど今日みたいな日に多かったような記憶がある。はて?とそこにひっかかった。暑さのせい、といっても、サーバーは強力な空調管理下にあって、熱暴走が起きるわけがない。停電があったとしても瞬時に緊急用自家発電に切り替わる。  そしてそのトラブルは毎度、谷さんが、あぁそう、とことも無げに見事回復させていた。  そうか、その時の作業報告を引っ張り出して見ると何か分かるかもしれない。そう思い立った私はまた会社に向かって少し早足で歩き出した。    日々の作業日報は、谷さんがいた頃のデータもデジタルで保存されている。見ると「プログラムリセット」とあり、それ以上の詳しい書き込みはなかった。まぁ、恐らくはそんなもんだろうとは予測はしていたが、ベテランに有り勝ちな手抜きだ。  しかしまてよ、あのシステムは古いハードの上で動いている。本当にリセットするなら半時間ほどかかるし、関係する金融会社全てにその旨連絡するなど、大ごとになるはずだ。それを彼は生返事一つですぐに終わらせていた。ということはプログラムリセットというのは嘘で、他に何か手段を講じていたと言うことになる。  さてそれは? とやっと思考が冴え出した頃、膠着状態に陥って少し落ち着いた電話連絡がまた増えて来た。しかも相手は営業や技術ではなく、広報関連が増えた。どうやら誰かがマスコミにリークしたらしい。  そもそも、あのシステムはCOBOLという言語が走っていて、非常にプログラムが長いと言う特徴というか欠点を持っている。何十年にも渡ってメンテして来たため、まるでスパゲッティのように複雑に絡み合い、それを少しでも防ごうと時々の担当者が詳細なコメントを書き加えているので、逆にソバメシのようにバラバラにちぎれているようにも見える。問題箇所を探し出すだけで数十分はかかるはずだ。  
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