第3話 花色衣と月の影

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 我が家はキッチンとリビングが併設されいる。 午前11時少し前。夫が起きてきたようだ。トイレに行って、顔を洗って。それから着替えて。そしてリビングへとやってくる。 「おはよう」 「おはよう」  機械的に挨拶を交わす。夫はまず冷蔵庫を開け、作り置きしてある麦茶をコップにつぐ。それを持ってソファに座る。そして飲みながらテーブルの上に用意してある新聞を読むのだ。  いつものパターンだ。 だけど今日は、新聞の上にあるものを置いてある。 ……どんな反応をするだろうか……  私は夫の朝食を用意しながら、キッチンからコッソリと反応を伺う。 …ドキ、ドキ、ドキ…  鼓動が高鳴る。まるで恋しているかのように。夫が新聞に手を伸ばした! 気付いたようだ。黙ってそれを読む。 ……マズイ!彼がこちらを見る!……    その瞬間に、下に屈み込んだ。少ししてさり気無く立って見ると、夫はリビングから消えていた。 ……裏目に出たか。そうだよね。いきなり何の前触れもなくそんな事されたら、気味悪いよね……    まるで失恋が決定的になった時みたいにショックだった。40女が、何してるんだか……。  再び戻って来た夫は、手に何か長い細いものを持っていた。そしてソ ファには座らず正座をし、ソレに何かを書き始めた。  良かった。別に引いた訳じゃなさそうだ。何を書いているかは知らないけれど。 「お待たせ」  私は何喰わぬ顔でトレイにご飯と味噌汁、焼きさんまと大根おろし、南瓜の煮物を載せて、テーブルに載せる。そして緑茶を二人分淹れに戻った。 ……夫はどんな反応を示すだろう?再び鼓動が高鳴った……
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