本編

10/18
前へ
/18ページ
次へ
それからいくつかの動画を流し見した。動画を撮影しているのは大抵決まった場所で、3Dモデルを構築するのに何の役にも立ちそうにない。そろそろオブジェクトの補完作業に移るべきかもしれない。そう思い始めた頃、不可解な事実に気づいた。動画の配信日は不定期のようだが、いつも決まった時刻に行われているようだった。しかしいつも同じ始まり方をするかと言うと、そうではない。カメラが起動してとうに配信が始まっているのに、男が画面に映っていないことがままあった。そんな時、男は大抵不機嫌そうで、どこか寝起きのようにも思えた。そして決まって、周りを見渡したり、画面の上方を睨んだりしている。ーー部屋に他の誰かがいるのか? それならば説明がつく。男は自分ではない誰かに嫌々、配信をさせられているのかもしれない。しかし、男は機嫌がよければ饒舌に話すし、“配信業”をしていることに誇りを感じているようだった。どうも嫌々とは思えない。だが男の意に反して、誰かが配信開始のボタンを押していることは明白だった。いったい誰が。推論を重ねながら次の動画を再生していたとき、その“誰か”が尻尾を覗かせた。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加