イサクと平面的動画群

本編

時間をおかず、次の動画を再生する。今度は冒頭から男の姿が見えた。カメラの前であぐらをかき、発泡酒の500ml缶を持っていた。まだガラス戸を通して自然光が差している。昼から飲酒とは結構なご身分である。カメラの位置は前回とほぼ同じだったが、やや高さと位置が違っている。これなら少しは参考になりそうだった。とは言え、これだけでは3Dモデルを立ち上げるのに充分ではないが。動画を再生停止しようとしたが、ふと男に興味を抱く。彼の濁声に耳を傾けた。男は「配信で飯を食ってる」と誇らしげに言った。配信することによる広告収入か、動画サイト運営側からの報奨金か、はたまたリスナーからのお布施か。詳しい収入源について言及はなかったが、動画配信だけで生活できるものなのだろうか。当時の生活水準も定かではないし、そもそもこの“文化”が現在残っていないため、判断はつきかねた。男は淡々とコメントを読み上げ、反応をする。時々にやけた口元から、汚らしい前歯が覗く。目は充血していて、その周囲には隈が目立つ。