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なんともない。
さっきのは杞憂だったかな。
俺の勘だってけっこう外れる。今回は外れてよかった。
「退屈だなあ。守、面白い話してよ」
「えええ……無茶振りもひどくない……?」
「さっきみたいな話、ききたい。ジャックの記憶とか話せよ」
うーん、と俺は首をひねる。
「けっこう断片的なんだよね……まずさぁ、俺、ジャックが死んだときの記憶、持ってないんだ」
ギラギラした目で町を歩くジャック。人に向かってナイフを振り上げるジャック。殺人知識。そして、激しい感情。俺が憶えているのはそれくらいだ。
「死んだときの記憶かあ。持ってなくてよかったんじゃないの。覚えてると、情緒不安定になりやすいって言うし」
「斗桐は?」
「僕も憶えて……ないんだよね……というか、ほとんど……」
かくん、と斗桐の頭が下を向いた。
「斗桐……?」
下から覗き込むと、くぅくぅと斗桐が寝息を立てていた。
「なんで、突然……?まさか、紅茶にクスリが……んんっ!?!?」
知らない間に扉が開いていて。
後ろから白くて綺麗な腕が伸びてきて。
そして俺は完全に拘束されたのだった。
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