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俺はたどたどしい言葉で、俺の気持ちを伝えた。
斗桐は黙って俺の話を聞いてくれた。そうしてるとほんと天使みたいだね、君。
まとめると、こうだ。
「犯罪ってね、ほんとうに、素敵なことなんだ。人間が悪いことをしようとする時には、いいことをするより人間的なモノがいる。感情とか、愛とか。俺はね、そういう激しい衝動を見るのが、たまらなく好きなんだ。小さいときから、ジャックの記憶を見ていたせいかもしれない」
「ジャックはね、とてもとても、人を憎んでいた。人を殺す為に、人のことを調べ上げ、毎日毎日殺人のことだけを考えていた。俺はジャックのしたことを肯定しないけど、そんなひたむきさが、とても愛おしいと思うんだ」
「憎しみ――憎しみって、大事だよ。何かを心から愛せる人じゃないと、人を殺すほどの憎しみって抱けない。ジャックはとても人間を崇拝していて、心から尊敬していたんだ。でも現実はそうじゃなかったから、どうしようもないほどの憎しみに身をまかせた」
「だから俺は気軽な殺人が嫌いだなあ」
「いや、気軽な犯罪行為そのものが嫌いなんだ。君が俺をレイプしたようなね。くだらない。つまらない。少しも印象に残らない」
「俺はね、そういうつまらない犯罪が――吐き気がするほど、嫌いでね」
「くだらない犯罪が起こりそうになったら――止められるこの才能が、とても便利だよ」
斗桐はじっと俺を見る。
「……君は本当に、ジャック・ザ・リッパーの生まれ変わりなんだね。よく分かったよ。サイコパス犯罪者は被害者がなることが多いらしいけど、きっと君はそうなるよ」
俺は大笑いしてしまった。あはははと馬鹿馬鹿しく。
「ならないよ!だって俺は……ジャックほど、人を愛していないもの」
そう。
俺はジャックの記憶を持ってはいるが、ジャックのように人間に恋焦がれたりしない。
ジャックの記憶のおかげで、人間がどれほど弱く、脆く、崇拝したり信じたりしちゃいけないかを、俺は学ぶことができたからだ。
「君みたいに、天使であることを社会に強要されるように、犯罪者であることを社会に強要されたりしないから」
はっと斗桐が息を詰める。
「天使であること、も、何も、僕は天使だから……ナイチンゲールの生まれ変わりだから……」
青ざめて斗桐が呟く。えええ、それ俺に言う……?
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