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それから一ヶ月経ち、あれは俺の思い違いだったのかと考え始めた頃。
あの戦車の模型を、リサイクルショップで見つけた。店員に聞くと、体操服を着たガタイのいい男子がこれを売りに来たのだと言った。部活帰りの山本の姿が容易に想像できた。
俺の中で、何かが崩れ落ちた音がした。
最初は、いい奴だと思っていたんだ。
途中から少しだけ印象は変わったものの、ただ口が悪いだけなのだと、そう思いたかった。
けれど……違った。
山本は、俺をいいように使うことしか考えていなかったんだ。
絶望し、クラスメイトも教師も信用できなくなった俺は、学校へ行くことさえも嫌になった。それと同時に、親から買い与えられたパソコンでネットをするのにのめりこんだ。引きこもりと化すのは、時間の問題だった。
こうして今に至り……将来に不安しか残っていないダメ人間の出来上がりってわけさ。
はは。自分の話なのに、まるで他人事のようだな。あれから時間も経ったから、俺も客観的に考えられる術を手に入れたんだろう。だから、過去の怨念など忘れてしまうべきだ……。
なァんて、考えられるわけがねえんだなあコレがッ!! 忌々しいあの糞野郎がッ!! 山本のことだけは何があっても許せねえし忘れもしねえッ!!
あのツラを見るのは数年ぶりだが、苛立って苛立って仕方がねえんだ。ハラワタが煮えくり返ってオイルが漏れそうなんだよッ!!
『復讐に意味がない?』
『やり遂げたところで過去は変わらない?』
んなこたァどうだっていいんだよッ!!
俺はただ単純に、山本の苦しむ姿が見てえだけなんだッ!!
あいつが、悪い。
俺が死を選んだのも。
こんな身体になっちまったのも。
そして、こんな姿になった俺に轢き殺されるのもなあッ!! 全部、あの野郎の責任だよ!
今の俺ならば、何をしようが法に問われることなどないだろう。奴の生殺与奪を、俺が握っているんだ。
黒い愉悦が、心の空白をゆっくりと埋めていく。
轢き殺す瞬間、山本はどんな顔をするんだろう? 泣いて許しを懇願するのか? それとも、必死で逃げ惑うのか?
俺は。
ゆっくりと、デコトラを動かした。
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