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『あわ、あわわわわ!』
俺の頭の中に、妙な声が響いた。それも、微妙にノイズがかかったような音。なんだこれ?
音がした方角を見ると……黒塗りの高級車が見えた。確か、山本を轢いたのはあの車だな。
その山本はと言うと、少し吹っ飛んだだけで意識はあるみたいだ。通りがかった人が救助をしている。悪運の強い野郎だ。
『あの人死んじゃったらどうしよう!』
まただ。それも、よく聞いてみたら幼い少女のような声色をしている。
『騒ぐなよ。ほっときゃ大丈夫だ』
届くはずもないだろうが、心中で声を発してみた。
『ん? 今の声はだあれ?』
『俺だよ。デコトラと化した……って、え?』
『デコトラ? あのハデハデなトラックのことかなあ?』
すると、俺の前に山本を轢いた黒塗りの高級車が走り寄ってきた。あんな車に乗りたがるのは、一流企業の重役かヤクザくらいのものだろう。それが盛んにクラクションを鳴らしている。
『ねえ、ヘンなトラックのお兄ちゃ~ん! 私とお話しようよ~!』
まさか……あの車も。
俺と同じ、車に転生させられた人間なのか!?
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