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『カチコミかぁわりゃあああ!?』
スキンヘッドで強面のお兄さんが、全身に血管を浮かび上がらせながらお出迎えしてくれた。
はい確定。蜜柑ちゃんはヤクザ屋さんとこの娘でした! もう帰っていいですか!?
こちらのお宅は高い塀に囲まれており、入り口には由緒正しそうな門が設えてある。それだけならば古風なお金持ちの家ととることもできるだろうが、どこもかしこも監視カメラが取り付けられていて異様な光景となっている。それによく見てみたら、高い塀の上には有刺鉄線があり、侵入者を断固として許さない体制がありありと伝わってきた。
ザ・ヤクザって感じだな……。
そんなところへ、ド派手なクソデカトラックの俺とヤクザ御用達なデザインの黒塗り高級車が現れたもんだから、見張り役と思しき男はずっと怒り狂っている。
「邪魔なんじゃああデコトラ野郎があああ!!」
『あ。中田さんだ!』
『顔見知りなのか?』
『うん。お父さんの代わりに、私の病室へお花を届けてくれるいい人なんだ。普段はお花屋さんで働いてるんだって』
あのルックスで花屋? それだとお客も寄り付かないんじゃなかろうか……。しかし、一部の葬儀屋や花屋はヤクザと蜜月の関係となっているという噂もあるしなあ。ネットで得た知識なんで、本当かどうかは知らんが。
『中田さん、怒ってるなあ。なんでだろ? それに、前に会ったときは後ろのほうだけ髪があったけど、イメチェンかな』
それはね、たぶん残りの薄ら寒い髪の毛に見切りをつけて全部切っちゃったんだよ。ヤクザ屋さん的にも、中途半端ハゲよりもオールハゲのほうがカッコもつくからね。
「おんどれら何しに来とんじゃ!? ぶっ千切るぞッ! 羊の毛刈りみてえに髪の毛まるごとむしり取られてえのか!」
頭髪への攻撃オンリーかよ。私怨丸出しじゃねえか。あと切るのなら枝の剪定だけにして下さい!
しかし、俺も蜜柑ちゃんもこんな身体だ。車を降りて話すどころか、まともに意思表示さえ出来ない。それに相手はヤクザ。こちらが無人で動くクルマと知れたら、どう出てくるか予想もつかない。蜜柑ちゃんには悪いが、ここはとっとと退却したほうが良さそうだ。
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