黒塗りの高級車と化した幼女

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 そんな最中、見張り役の中田さんに声をかける人物が現れた。 「うるせえな。どうしたんだ、何かあったのか」 『あっ、お父さんだ!』 『え。あの人が?』  見た感じ、清潔感のある渋いおじさまといった雰囲気だ。スーツ姿でメガネをかけており、サラリーマンに見えなくもない。しかし常人離れした目つきの鋭さが垣間見えるのでやっぱり怖い。昔ながらのヤクザというよりもインテリヤクザっぽい人だと思った。 「兄貴ぃ! おかしな車が目の前にいるんですよ!」 「見りゃ分かるよ。それで? 向こうは何かしてきたのか」 「いえ、それは……」 「じゃあ黙ってろ。問題あるか?」 「いっ、いえ!」 「分かったらこの場は俺に任せろ。何とかしておくから、お前は引っ込んでな」  睨みをきかせると、中田さんは身をすくめてどこかへ行ってしまった。  蜜柑ちゃんのお父さんは俺たちを一瞥した後、急にタバコを吸い出した。今すぐどうこうするつもりもないなら、とっとと逃げ出すか? しかし、肝心の蜜柑ちゃんが付いてきてくれるか心配だ。  そんなことを考えているうちに、お父さんは一服を終えてしまった。ちなみに吸い殻はきちんと携帯灰皿に仕舞っている。模範的な愛煙家だった。  それからお父さんは、何かを気にするように辺りを見回した。周囲に誰もいないことを確認した後、なんとデコトラの車中に入り込もうとしたんだ。当然、俺はロックをかけているが、お父さんは車を叩きながら必死で叫んだ。 「開けろよ! 運転手と取り引きしてえんだ!」  取り引きだって? 「金ならいくらでも出す! だから俺を轢き殺してくれ!」
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