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こうして蜜柑ちゃんのお父さんと別れた俺たちは、適当な駐車場までクルマを走らせて、落ち着いたところで話をした。
『蜜柑ちゃん。別に、素性を明かしちゃいけないってルールがあるわけでもないんだからさ。家族水入らずで、お父さんと暮らしてもよかったんじゃないのか?』
あの後もう少し一緒に居られれば、黒塗りの高級車に蜜柑ちゃんの魂が宿っているのだとお父さんにも気付いてもらえたかもしれないのだ。しかし蜜柑ちゃんは『それはダメ』と、断固として断った。
『私はもう、死んじゃった人間なんだから……。これ以上お父さんを縛り付けるようなこと、したくないんだ。だから、さっきのでおしまい。お父さんにはお父さんの、わたしにはわたしの……。これからの、生き方があるんだもん』
『これから、か……』
こんなカタチになってしまった俺たち。悪意ある人間に素性を知られたら最後、解体されてスクラップか、それともずっとどこかで展示でもされるのか……。
ちゃんと考えてみると、お先が真っ暗過ぎる。誰も来ない山奥でずっと引きこもっていればいいのか? って、それだと場所が変わっただけでやってることが前世と変わらねえな……。
気分が重くなる。改めて、あのふざけた女神を恨んだ。FXとかに失敗して有り金全部溶かせ。
『あ、そうだ!』
そんな俺に対し、一段と明るい声をあげた蜜柑ちゃん。
『次は、おにいちゃんの番だね!』
『は? どういうことだ?』
『二人で、おにいちゃんのおうちへ行くの!』
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