女神様の手違いでデコトラと化した俺

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「全ては私が戯れに書いたブログが原因なのですよ」 「ブログ……? おい、もしかしてそれって『異世界転生日記』のことか!?」 「ええ。流石にご存じでしたか」  異世界転生日記。デコトラの都市伝説が巷にはびこるようになった原因の一つとされているブログだ。俺もよく知っているので、ざっと説明しよう。  まずブログ主の写真だが、現代に不相応な甲冑姿の出で立ちだ。この時点で常軌を逸しているのが分かってもらえるだろう。そのうえ銃刀法違反間違い無しの巨大なバスターソードを掲げて晴れやかな笑顔を浮かべている。  そのブログは「私が轢かれました!」という日記から始まる。まるで農家のおじさんが「私が育てました!」と声高に宣言しているかのようだ。  ブログ主はデコトラに轢かれたことがきっかけで異世界に転生したという。そこでは、レベルカンスト状態の強過ぎてニューゲーム状態だったらしい。  彼はその強さを遺憾なく発揮し、異世界にいたワルそうな奴はだいたいぶちのめした。もちろん道中ではハーレムを築くのも忘れず、戦いも色恋もすべて無敗のまま、遂には魔王を討ち滅ぼすことにも成功した。  その後、まあぶっちゃけ異世界にも飽きてきたな~と感じた彼は、皆に惜しまれつつ日本へと帰還したそうだ。  と、これだけなら多少手の込んだフィクション体験記といったところだろうが、彼のブログには異世界で撮ったという「写真」が数多くアップされていた。  黄金の水が湧き出る泉。  ジャンボジェット機よりも大きく雄大なドラゴン。  美しい妖精や、獰猛な魔獣たち。  ブログ主は友達と自撮りするような感覚で、パーティー揃って魔王城の前で記念写真を撮っていた。CGでの合成にしてはあまりにも違和感が無さすぎるそれらの写真は、たちまち話題となった。  そしていつしか、彼のブログは「本物」であると囁かれるようになった頃。頻繁に更新していたはずのブログに変化が訪れていた。  「再び、楽園へ逝ってきます」という書き込みを最期に、ぷっつりと更新が途絶えていたのだ。  俺を含めた多くの読者たちは、ブログ主の来世の幸運を祈ったのであった……。
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