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そうだ、思い出した。
かつて俺が思い描いていた、将来の夢を。
「俺さ、本当は陸上自衛官になりたかったんだ」
「へえ」
「そもそも、物心ついた頃から戦車乗りに憧れてたんだ。それが高じて九九を覚えるよりも先に、モールス信号をぜんぶ暗記したりとかな。今でも陸自ではモールス信号を使ってるって聞いたからさ」
「ふーん」
「おい。なんだよその生返事。完っ全に興味ゼロだな! 真面目に話してるんだから、少しくらいは合わせてくれよ……」
「ん。いやいや、ちゃんと聞いてましたよ? 少し手元が忙しくって。あれでしょ、ユトリン様が将来なりたいのは、えーっと。ガンダムのパイロットか何かでしたっけ」
「違えよ!」
「ガンダムのアニメに出たかったら声優さんにでもなればいいんじゃないですかねー。そういう来世が良かったんですか?」
ちっとも聞いてねえ。でも、目をつぶって何やら考えてる風な素振りは見せている。うまいことやってくれるんだろうな……。
「あっ」
おい。今「あっ」って言ったぞ。それも多分、ミスったときの「あっ」だ。
急に足下から力が抜ける感覚がした。立っていられない。それに、この妙な浮遊感みたいなものはなんだ?
「突然の幕切れとなってしまいましたが……。ユトリン様。来世でのゴケントウヲ、オイノリシテイマス」
あまりにも心がこもってなさ過ぎて片言に聞こえる。
まさか、だよな。
俺……このまま転生するのか!?
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