女神様の手違いでデコトラと化した俺

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 目が覚めると、そこは現実世界だった。ごくありふれた日本の風景が広がっている。良かった、あれは悪い夢だったんだな……。  だが、それにしては妙に視点が高いな。それに、身体から力がみなぎるようだ。今だったら、どんな重い荷物だって軽々と運べるような気がする。  そう。今の俺は、言うなれば人間トラックだ。……ってかこれ、トラックそのものじゃねえか!?  それも、あのクソ女神……!  これ、デコトラじゃねえかッ!! ふざけんなよ! 戦車に生まれ変わりたいとは言ったが、何でデコトラになってるんだよ!?  あの女神、途中でミスしたっぽい雰囲気だったが、どこをどう間違えたらこんなことになるんだよ……。  俺はこれから第二の人生、もとい「車生」を送らなければいけないのか。この身は今やデコレーショントラック。劇画タッチの神様たちが雅に描かれ、彩り豊かな電飾が激しく明滅している。車体そのものを直接見ることはできないが、デザインやパーツなどは隅から隅まで頭の中に叩き込まれている状態だ。俺は車として生まれ変わってしまったのだと、嫌でも思い知らされた。  トラックの左半分には、七福神の一尊である毘沙門天が描かれている。対して右半分には、同じく七福神の一尊、弁才天が描かれていた。どちらも威風堂々とした佇まいをしており、思わず見惚れてしまった。デコトラなんてもはや旧世紀の遺物と思っていたが、なかなか悪くないじゃないか。  今、俺は空き地に駐車している状態らしい。人通りが途絶えたタイミングを見計らい、発進させてみた。すると、デコトラは俺の手足のように動いた。デカい車体を操るのも問題ない。それに、俺の頭の中には交通ルールが完璧に刻まれているらしい。これならば、無免許であっても事故を起こす心配は無さそうだ。  それに、生前と比べて視力も格段に高くなっている。百メートル以上離れた人の顔かたちまではっきりと分かるくらい……。  おい。マジかよ。  あいつ……山本じゃねえか。  俺にとっての不倶戴天の怨敵。  俺をこんな目に遭わせてくれたのも。  元を正せば、すべてあいつのせいなのだから……ッ!!
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