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接近
「どうもご迷惑をおかけしました」
黒崎は外科の部長である松田敏一に深く頭を下げた。
松田部長は、その温和な顔を心配そうに曇らせている。
「本当にもう少し休んでいないで大丈夫なんですか? 黒崎先生」
「はい。もう大丈夫です」
「それならいいんですが、どうも黒崎先生は無理をしすぎるきらいがあるから。少しでも具合が悪くなれば、今度こそはちゃんと言ってくださいよ」
「分かりました」
――結局、黒崎は二週間の入院のあと、職場に復帰した。
沢井をはじめとする先輩医師たちには、せめてあと一週間はゆっくりしたほうがいいと言われたが、無理を通して退院させてもらった。
ともあれ、黒崎は今日からまた白衣に腕を通した。
久しぶりに着る白衣は少し大きく感じられた。
……ちょっとやせたかな?
そんなことを考えながら、外科のスタッフステーションへ行くと、その場にいた人たちが次々黒崎に声をかけてきた。
「まあ、あんまり無理すんなよ、黒崎」
川上にそう言われて肩を叩かれたとき、慌ただしく沢井がやってきた。
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