二人の物語の始まり

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 黒崎の中でゆっくりと記憶が繋がっていく。  ……ああ、そうだ。  昨日の帰り、出入り口のところで、また左半身がすごく痛んで、立ってられなくなって……。  そしたら、沢井先生が来て……。  ……そこからの記憶がない。  黒崎が思い出そうとしていると、沢井がやってきた。 「気がついたか。気分はどうだ? 痛むところはあるか?」  沢井は黒崎の顔を覗き込み、心配そうに聞いてくる。 「あ、……いえ。もう……」  大丈夫です、と続けて、起き上がろうとする黒崎を、沢井が慌てて押さえる。 「バカ。当分は絶対安静なんだぞ」 「え……?」 「……肋骨が二本折れてて、そのうちの一本が内臓を傷つけていたから、昨夜、緊急手術をしたんだ」 「……今、何時なんですか?」 「昼の一時過ぎ」  沢井はそう答えてから、黒崎の点滴を調節した。  そして呆れたような表情で、黒崎を見おろす。 「あのな、黒崎、痛いときは痛いって言えよ。オレたちは超能力者じゃないんだから、おまえみたいに無表情でいられたら、こんな怪我してるなんて思わないだろ」
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