二人の物語の始まり

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 ベッドに一人残った黒崎は、今まで覚えたことのない感情に戸惑っていた。  さっき、沢井の大きな手で頭を撫でられているとき、なんだかすごく安心したというか、安らぎ? のような気持ちを感じた。  それに……胸が少し苦しいような、でも決して不快なのではなく……なんとも例えようのない感覚がして……。  黒崎は、自分の感情の正体が分からずに、困惑するばかりだった。  黒崎が自分でもつかみきれない気持ちを持て余していると、今度は川上がやってきた。 「おう、どうだ? 具合は」  気さくに話しかけてくれるこの先輩医師は、沢井と同期で大学時代からの友人だという。 「はい。大丈夫です。ご迷惑かけてすいませんでした」 「いやいや。オレは昨夜はもともと当直だったし、幸いにも他に急患も急変する患者さんもいなかったからね。……でも、沢井がとても心配してたよ? あいつは一昨日も当直だったし、おまえの手術が無事終わったから、帰って休めって言っても、黒崎が意識を取り戻すまではって言い張って聞かなくてさ」 「……沢井先生、大丈夫なんですか? そんな二日も続けて……」
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