二人の物語の始まり

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「……沢井先生、昼もそんなことを言いましたね。オレのことやさしいって」  黒崎は怪訝に思い、そう聞いてみた。 「やさしいじゃないか。そうやってオレの体のこと、心配してくれるんだから」 「それは……、後輩として先輩の沢井先生のことを心配するのは、当然のことだからです」  黒崎がそう言葉を繋ぐと、沢井は苦笑を浮かべた。 「……おまえなー、無表情でそういうことを言うなよ。うそでも、『大切な沢井先生のことが心配で……』とかくらい言えよな」 「……は?」  沢井の言うことの意味が黒崎にはよく分からなかった。  首を傾げる黒崎を見て、沢井はどこかバツが悪そうな表情をしてから、言葉を続けた。 「それに、その怪我のことだってそうだろ。警察を呼ぶことも相手を責めることもしないで、一人で抱えて、やさしすぎるくらいじゃないか」 「それは違います」  黒崎は即答した」
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