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春、四月。
どこの職場でも新入社員を迎えているように、沢井和浩が外科医として勤める、ここ源氏ケ丘大学付属病院でも、新たに研修医を迎えていた。
今年の新人は三人。男性が二人、女性が一人である。
沢井から見て、左から小野久美子、山本隆、黒崎雅文という面々が並んでいる。
小野はやさしそうな美人で、子供や男性患者に人気が出そうなタイプ。
山本はお笑い芸人になったほうが向いているのではないかといった、明るすぎるタイプ。
そしてもう一人、沢井が目を奪われた青年、黒崎は極上の美青年だった。
大きな瞳が印象的な小顔、サラサラと真っ直ぐな髪は天使の輪もくっきりで。上背はそこそこあるが、ほっそりとした華奢な体。
沢井は彼を一目見て、心をも奪われてしまった。
ただ黒崎には問題があった。
他の二人の研修医は、緊張しつつも、先輩医師たちの質問ににこやかに答えているというのに、ただ一人黒崎だけは表情一つ変えることなく、「よろしくお願いします」と言ったきり、話の和に入ってこようともしない。
そう完璧な美貌を持つ黒崎研修医は、愛想と協調性が皆無だったのだ――。
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