接近

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 沢井と目が合う度、体がかすかに触れ合う度、黒崎は今まで覚えたことのない感情に捕われて、戸惑ってしまう。  うれしいというのも少し違う気がするし、勿論、悲しいというのはまったく違う。  どんな言葉を当てはめたらいいのか、まったく分からない。  最初は、両親の愛に恵まれていない自分が、沢井のことを『父親』のように感じているのかと思った。  医師としてのキャリアも腕も格段と上にいて、一回り年上の彼に。  確かにそういう面がまったくないとは言えないだろうが、それでもやはり、自分のこの感情は、そんなものじゃないような気がした。  そう、この気持ちは……、  ……切ない……?  不意に黒崎の脳裏にそんな言葉が浮かんだが、その言葉の響きはあまりにも曖昧すぎて……。  沢井の姿を見る度、謎は深まり、結果、食が進まない。  ここ数日はそんな繰り返しだった。  青空に鳥が楽しそうに舞っている。  ぼんやりとそれを見ていると、 「黒崎」  後ろから沢井の声が聞こえた。
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