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フェンスを背に立つ黒崎は、やせたせいかとても儚げで、沢井は彼を抱きしめたい衝動に駆られた。
「……沢井先生?」
黒崎は表情の変化に乏しい、いわゆるポーカーフェイスだ。
それゆえ、その内心を想像することは、とても難しい。
今もいったいなにを考えているのか、
具合がよくないのか、
屈託していることがあるのか、
その表情からはまったく読み取れない。
沢井は歯がゆかった。
「黒崎、おまえ、あんまり飯食ってないんだって? そんなんで体力、持つのか? もしかして怪我したところが痛むんじゃないだろうな?」
「いいえ。そんなことはないです。……食事もちゃんととってます」
「嘘言えっ。まったく手がかかるんだから、おまえは。ほらっ」
沢井はコンビニで買ってきたサンドイッチを、黒崎のほうへ投げた。
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