接近

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「せめて、それ一個くらいは食えよ? でないとマジで倒れるぞ」 「……はい」  サンドイッチを受け取った黒崎は、素直にその包みを破り、パンにかぶりついた。  食べてる姿まで絵になるな……。  沢井はそんなことを思いながら、缶コーヒーを片手にゆっくりと歩き、黒崎の傍に立った。 「なあ、黒崎、聞いていいか?」 「なんですか?」 「おまえ今、好きな人っているのか?」  手に持っている缶コーヒーを黒崎に渡しながら問う。  黒崎は小さく、「ありがとうございます」と言うと、プルトップを開け、コーヒーを一口飲んでから、あっさりと答えた。 「いません」  沢井の予想した通りの答だった。 『あなたです、沢井先生』……とは答えてくれなかったな、当たり前だけど。  まあ、黒崎に意中の女性がいないだけでも良しとするべきか。 「じゃさ、今まで何人くらいの子とつき合った?」 「……は?」 「だからさ、何人の女の子とつき合ったか聞いてるんだよ」  ……まさか、男とつき合った経験があるとか言うんじゃないだろうな?  沢井は少し心配になった。  これだけの美形だし……。  だが、黒崎から返ってきた答は、 「ないです」  これまた、あっさり一言で。
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