接近

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「はあ?」  沢井は思わず間抜けな声を出してしまった。  ないって……、おい。  沢井は目が点になる思いだった。 「ないって? まったく? うそだろ……。だって、おまえモテるだろ?」 「さあ、どうでしょう……」 「どうでしょうって……。好きですとか告白されたり、ラブレターもらったりしたことあるだろ?」 「ああ……、それはありますけど。勉強とバイトで忙しかったんで……」 「じゃ、黒崎、おまえ、もしかして、キスしたこと……」 「ありません」  綺麗なポーカーフェイスで、きっぱりと黒崎は答えた。  そんな黒崎に沢井は重ねて訊ねた。 「じゃ……、その、セックスしたことは――」 「ないですけど。それが、なにか?」  さすがに少しムッとした表情になった黒崎が、愛想の欠片もない声で聞き返してきた。
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