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屋上でのやり取りから数日後の夜。
黒崎が一日の仕事を終えて更衣室で着替えていると、勢いよく扉が開き、沢井が入ってきた。
走ってきたのか、少し息を切らして、
「良かった、間に合った……」
黒崎を見るなり、そんなふうに言った。
黒崎の謎はいまだ解けておらず、このときも沢井の姿を見るなり、途端に心拍が駆け足を始めた。
だが、それを決して顔に出さず、懸命に冷静さを装う。
「……なにか、オレにご用ですか?」
「ああ。オレも今日、終わりなんだけどさ。おまえ、これから時間あるか? 黒崎」
「え……? はあ……」
無表情の仮面を被ってはいるが、黒崎の内心は処理しきれないほどの謎の感情でいっぱいだった。
「それじゃ、怪我の全快祝いに奢ってやるからつき合えよ」
沢井の言葉に黒崎は困惑した。
「……え、でも、全快祝いなら、ついこの前していただきましたけど……」
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