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二人きりの全快祝い
三日前に山本が中心となって、看護師や事務の人たちも集めて、病院の近所にある居酒屋で黒崎の全快祝いをしてくれた。
先輩医師である、沢井も川上も三月も、部長である松田までもが、代わる代わる顔を出してくれた。
「あれは外科医仲間全体で、だっただろ。今夜はオレと二人での全快祝いだよ」
黒崎の鼓動がトクンと一際大きく跳ね上がる。
「……あの、沢井先生と二人きりで、ですか?」
黒崎の二つ向こうのロッカーを開けて着替え始めた沢井に訊ねた。
「そうだけど、嫌か?」
「いえ……」
トクントクンと高鳴る鼓動は呼吸を圧迫する速さで。
その音が沢井にまで聞こえてしまいそうな気がした。
沢井先生と二人きりで食事なんて、緊張しまくって困ると思う反面、彼と二人きりでいられるということに心が浮き立つ自分もいる。
相反する気持ちを抱えながら、黒崎は沢井といっしょに更衣室をあとにした。
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