二人の物語の始まり

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「黒崎!? おい、どうしたんだ? 大丈夫か!?」  黒崎は苦しそうに目を閉じていて、呼吸も少し荒い。  彼は沢井に気づくと、薄っすらと目を開け、 「……沢井先生、大丈夫です……。少し、貧血気味なだけで……」  そう言って立ち上がろうとするのを慌ててとめる。 「ちょっとジッとしてろ!」  沢井はまず脈をはかろうと、黒崎のほっそりとした首筋に右手を当てると、彼の体は驚くほど熱い。 「おまえ、すごい熱あるぞ! とにかく戻ろう、立てるか?」 「……いえ、本当に平気です……か……ら……」  最後のほうの言葉は消え入るように小さくなって、途切れた。  そのまま黒崎の華奢な体が、沢井のほうへ力なくもたれかかってくる。 「黒崎っ!!」  沢井は、黒崎の体を支えるように自分の腕の中に包み込むと、ズボンのポケットからスマートホンを出して、当直の川上を呼び出した。
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