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眠気にうとうととし始めて、そのまま寝てしまおうとした時。
ふと、彼奴――そしてアーニーと三人で飲みに行ってた頃を思い出す。
当時はリヨンにいて、ローヌ沿いにある場末のバーによく出かけた……フランスなのにイリノイって名前だったよな。
俺たちみたいな無頼漢がいたり、時々酔客が哲学語ってる、質素な、薄暗い店。
『この雰囲気がいい』
いつものようにナンパ相手を待つ間、彼奴はマスターにそう言って苦笑いされてた。
……女の好みはあったよな。
見るからに軽そうなのじゃなく、教養と知性を兼ね備えてそうな客を誘って一夜を共にする。調子に乗った日は女二人連れをもれなくお持ち帰りして、俺たちは思わずマスターと顔を見合わせたもんだ。
女をエスコートして店を出る彼奴は、アーニーと一緒に笑って見送る俺の気持ちなんか、あの日まで知るよしもなかったろうさ。
……彼奴、今、何してるかな。
肋骨の疼きじゃない。
きゅっと、胸が苦しくなった。
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