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圭吾、と、やつの名を口に出してみる。
また胸が苦しくなった。
あれからもう、何年経つのかな。
お前の顔も、姿も、眼差しも。
快い、深みのある声だって思い出せるよ。
忘却に追いやれなかったほろ苦い思いが次々と俺の中にあふれてきて、
――会いたい。
突然、強く思った。
アーニーが死んで、やつは俺の前から消えた。
慰めることもできないまま、更には俺の知らないうちに傷付けられ、汚された彼奴。
それすら言わずに去ったやつに会って、話したい。苦しみを分かち合いたい。
そう、やつの心が多少和らぐはずの手土産ならある。
叶うのなら、会って、もう一度――
すっと眠気が覚めていく。
会うんだ、彼奴と。
渇きに似た欲に襲われてベッドから起き上がった俺は、リビングルームに置きっぱなしのスマートフォンを手にした。
時間には限りがある。
出来るだけ早く、やつに行き着く情報を手に入れなきゃならない。
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