he said,「smack you one」

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のどかで、娯楽施設なんか何もない南部のド田舎――まあ、牧場だしな――にあるマホーニーの家は賑やかで、日替わりで訪れる懐かしの面々と連日酒を飲み、語り明かす。仕事してた頃、そんなにお喋りなんかしなかったのにな。 だから滞在が一週間になり、十日になっちまって、さすがに毎日の肉とじゃがいも料理に飽きてきていた俺は、世話になったマホーニーと、圭吾が現在日本に住んでるって情報を探り当ててくれた愉快な仲間たちに別れを告げた。 楽しかったけど、やっぱり疲れてたみたいだ。ファーストクラスで空を移動する間、実によく寝た。 そして祖国は、暑かった。 「……ふーん」 いつか利用したはずの空港の造りなんか全然覚えてない。けれど久し振りに帰国したんだなと、多少浮かれてしまうことは俺自身ごまかせなかった。 職人の名前を冠したチョコレート菓子の店で小箱をひとつ買って、空港を出る。 やつの居どころについては確証が足りないままだったが、とりあえず動こうと考えていた。 ……国内観光も兼ねて。
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