he said,「smack you one」

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日本の夏はこんなに過酷なものだったかなと遠い記憶を探り、ガイドブックを読みながら移動する車中、たまにチョコレートをつまんでは寝る。 水分と塩分の補給を忘れずにという文言が、国内版のウェブニュース、紙面にもれなく載っている感がした。 俺が向かっているのは列島の南だ。 今より厳しい暑さが予想された、が。 「……楽園かよ」 青い海、空からでも見える白い砂浜。 タラップ車から建物に入る一瞬だけ熱気を感じたが、ターミナルから外に出るとからりとした風が吹いている。 早速、これからの交通手段を探した。 探りを入れて掴んだ情報だと、やつは空港から北に80キロあたりの地域に住んでいるらしい。大したことない距離にせよ、ここは交通の面で苦労しそうだった。 まず電車はないし、 「手前のリゾート地までなら行けなくはないけど、ちょっと遠いねえ」と、タクシーの運ちゃんがことごとく渋るのだ。
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