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その時ちょうど家から銀色のトレイを持って出てきた男がいる。
七分袖Tシャツとハーフパンツって身軽な格好で現れたのは、間違いない。やつだ。
女の子の後ろで軽く手を挙げてみせると、やつはすぐ俺に気づいたらしい。
――その瞬間の顔ったら。
まるで過去の亡霊に出くわしたような反応に、俺はそっと奥歯を噛み締めた。
……成程ね。
それが、再会のご感想かよ。
どうぞ、と、駐車場に戻る女の子に促されて浜に下りた。グリルの前に立つ、林って呼ばれてた男が軽い挨拶をしてくる。
「こんにちは。……いやー、いいとこだなあ」
挨拶を返し、海を眺めて声を上げてみせたけど、気持ちは複雑。
食材を持ってグリルに向かった圭吾に、のんびり話しかけてみた。
「久し振り。元気してた?」
「……まあな」
ぼそりと答える低い声。
素っ気ない受け答えに、俺も変な想像を掻き立てられる。
……圭吾、この林ってのは何だよ。
やけにいい男なんだけど。
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