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冷えた白ワインを手に眺めた日没の風景は、そりゃあ素晴らしいものだった。
ただそれよりも、タープの隅で微かに揺れているランタンの火が、多少がっかりしている俺の気分を和ませてくれる。
「佐伯さん、どうぞ」
「ありがと、唯ちゃん」
旨そうに焼けたフィレと付け合わせの野菜が乗った皿が回ってきた。
最近肉ばっか食ってたのにと一瞬辟易したのは人情。
それでも旨そうな柔らかい赤身肉を口に運ぶと、
「――旨っ」
塩胡椒だけのはずだ――でも格別の美味さが俺の気分を上げてくれる。
あ、そうか。
やつが焼いた肉だからかな。
気のせいか沈んだ面をした圭吾をちらと見る。するとやつも気づいたのか、冷たい眼で俺を一瞥してきた。
ちぇ。
どうやら俺は歓迎されていないらしい。
久々の対面だってのに、やつはおっかないくらいの殺気を浴びせてきやがる。
……でも。
もうひと切れ口に放り、芳ばしい肉と溢れる汁を噛み締めた。
お前が元気にしてたなら、別にいいけど。
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