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互いに打ち解けてきた頃、林にお里は何処かと訊いてみると、
「僕、日本人です」
「え」
つい、唯ちゃんを指差した。
「だってさっきこの子、君のこと林さんて」
「はやし、です。音読みがニックネームみたいになってて」
ああ、そういうこと。
でもさ、
「でも抑揚少し違うよなあ、海外長いの?」
「二年前まで上海に居ました。それまでもあちこち……一応、日本生まれです」
へえ、正真正銘の帰国子女か。
「で、今は? 学生?」
いえ、雇われ運転手です――そう答えた林の、一瞬見えた複雑な表情。
「セレブ付きの運転手なんだ。まだ若いのに、やるじゃん」
林の仕事の話はここらで止めることにした。あんまりこの話題には触れられたくなさそうに見えたからだ。
で、やつとの接点は何だと思いつつワイングラスに口をつけた時、
「佐伯さん、面白いブレスレットしてますね。ワイヤー?」
「これ?」
手を右手首に遣る。
「うん、確かにワイヤーかな。着けてみる?」
「あ、じゃあ」
お借りします、とはにかむ唯ちゃんにブレスレットを手渡した。
うーん、ちょっと君にはゴツいかもね。
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