終焉

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終焉

親父が戦地へ飛び立ってから1ヶ月。 大学の夏休みもそろそろ終わりを迎える頃、俺は母の仏壇に毎朝手を合わせるのが日課になっていた。 1ヶ月前までは親父がこれをしていたが、親父がいなくなってからは俺がこうして毎朝顔も朧げになってきた亡き母に手を合わせて親父のことをお願いします、と文字通り拝み倒している。 そして毎朝目にするのが何となく嫌なのが、親父がいつも飯を食う場所である机の一角に置かれた、帰宅するまで開封厳禁!というメモと共にある一枚のDVDである。 内容も気になるところであるが、一体何のために残したのか全く説明もなく、もし万が一何かあったら構わず見ろという言伝もあったので、その気になる中身は見たいが見ないで済むのが一番というある種のジレンマみたいなものを生み出していた。 まあ、気にすることもないか。 そう思って朝飯を食いながら何となくテレビを見ていた時であった。 普段は鳴らない家の電話が鳴り響き、どことなく嫌な予感満タンで受話器を取る。 「はい、桜井ですが」 「私、株式会社毎売新聞総務部の桂木と申します。桜井健介様でお間違いないでしょうか?」     
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