終焉

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親父が帰ってきたら怒るかな、とか何とか思いながらも怒ってくれる人がもしかしたらもうこの世にはいないかもしれないと思うと、どうしようもないほど飲み込まれそうな感情が心を掴んで離さなくなり、涙という形で溢れ出した。 「おーい、健介」 ああ、あの時撮ったホームビデオだな。 何となく冷静な自分がいた。 だが、画面を直視することができない。 「……助けて」 えっ?あの時撮ったホームビデオに確かそんな言葉は…。 反射的に画面を見ると、目を真っ赤に腫らしながら映る親父がいた。 「健介、父さんは怖い。助けてほしい。どうしようもなく怖い。死ぬかもしれない、二度と健介に会えないかもしれない。 さっきはああやって強がったが、今回の取材はそんなに容易いものではないと思う。父さんな、母さんの最期を思い出すと死ぬのが堪らなく怖いんだ。 話そうと思ってまだ言ってなかったんだが… 実は母さんはな、俺と同じ記者でな。母さんが死んだ時父さんもすぐそばにいたんだ。東日本大震災って健介は多分記憶にないだろうけど、被災地を取材中に余震で上から落ちてきた瓦礫に押し潰されてな…今でも夢に見るんだ。 助けて…苦しい…死にたくない…まだ死にたくない…誠さん…健介のこと頼んだわよ…健介に会いたい…まだ死にたくないって言いながら死んでいった母さんのことを。 俺はそうなりたくない、死にた…」     
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