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それは、雪が降る夜の森の出来事だ。
雪は昨日から降り始めており辺りは、雪が積もりに積もっていた。そんな中を誰が走ってくる女性の姿が見えた。その表情は必死そのものだった。
彼女は、時々後ろを振り返りながら腕の中を心配そうに見つめる。
よく見ると彼女の腕の中には、毛布に包まれ安らかに眠る赤ん坊がいた。
―――
数分走った頃だろうか、彼女は、森の中にひっそり佇む教会を見つける。教会のドアの鍵は、運良く空いていた。彼女は急いでその中に入る。
中に入ってもなお、彼女が足を休める事は無かった。そして、礼拝堂に入り、1番前にある主祭壇の前で歩みを止める。
礼拝堂の主祭壇の後ろには、綺麗なステンドグラスがあった。なので主祭壇には月光が当たっていた。
彼女は、主祭壇に赤ん坊をのせ、主祭壇の前に跪き祈りを捧げるように手を組みながら何かを呟く
『我 光の民族の者なり 世界を照らす優しい光よ 人々を包む優しい光よ それを生み出す光の天使ライトリアよ 彼の者を汝の光で優しく照らせ そして彼の者を慈しめ光の天使の加護』
彼女が呟いていたのは光属性の神級守護魔法の呪文だった。
呪文を唱えた後、彼女は赤ん坊へゆっくり体を近づけ、額へ一つ口付けを落とす。
すると、
口付けを落とした場所から光が溢れ出てくる。そして、赤ん坊の体を溢れ出た光優しく包み込む。まるで、赤ん坊を守るように優しく取り巻く光を彼女は優しく見守る。
やがて光のは赤ん坊の体へと吸い込まれていくように消える。それを最後まで見守った彼女は、赤ん坊の上に文字を書かれたメモを置く。
そして、微笑みを浮かべながら自身のシトリンの瞳をしっかり赤ん坊へ向け
「愛してるわ"ーー"」
愛の言葉を告げると彼女は、入ってきたドアへと踵を返す。その頬には一筋の涙がつたっていた。
そして、また何かから逃げるように走り出す。赤ん坊を置いてきぼりにした教会とは逆方向に。
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