「影のように実体のない身体を持って生まれた少年」の話

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外の世界に出てきても、僕は、普通の子どものように遊ぶことはできない。 廃材登りも、ボール遊びも、バトミントンも、公園のブランコもジャングルジムも、何もできないんだ。 外の世界に出て普通の子どものように遊びたいという夢が、僕にとってどれだけ無理な望みだったか、そのとき初めて知った。 廃材をすり抜ける僕の体を見た子どもたちは、当然驚いて、おばけだ、幽霊だとはやし立てながら逃げ回った。 「幽霊はここまで登ってこれないぞ!」と誰かが言って、子どもたちはあっという間に、一人残らず廃材の山を登ってガレージの屋根に避難した。 僕を遊びに誘ってくれた男の子も、みんなと一緒に屋根に登って、決して下りてこようとしなかった。 僕は居たたまれなくなって、急いで空き地をあとにし、自分の家に戻った。 もう外に出たいとは思わなかった。 それからは、ガラス戸の所に行って外の景色を見ることもやめた。
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