「影のように実体のない身体を持って生まれた少年」の話

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空き地には、僕を誘ってくれた男の子の友達が数人集まってた。 彼らはランドセルを空き地の隅にまとめて置いて、廃材の山に群がり、それを登り始めた。 そうやって、廃材の横にあるガレージの屋根の上まで登るのが、彼らのいちばんお気に入りの遊びだそうだった。 屋根に登った子どもは、悠々とそこに腰を下ろして、日向ぼっこをしながら持ち寄った駄菓子を広げて食べていた。 とても楽しそうで、見ている僕もわくわくした。 僕も、彼らと一緒に廃材を登ろうとした。 けれど――。 僕の手も足も、廃材をすり抜けてしまって、さわることができない。 僕は、そこにいる子どもたちのようにガレージの屋根には登れなかった。 そうなんだ。 考えてみれば、僕は家の階段だって登れない。 僕の家のアパートは建物の内側に廊下や階段があって、小さい頃、どこまでが自分の家なのかわからずに、わざとじゃなく両親の言いつけを破って廊下まで出てしまったことがあった。 そのとき上の階へ行ってみようとしたけど、僕の足は階段をすり抜けたんだ。
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