さようならはあたしから

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「また、会えるの」  窓をあけ、結構大声で叫んだ。  秀ちゃんは背中を向けたまま大きく手を振っている。 「お願いよ」  あたしは、奥さんには勝てない。どうやっても秀ちゃんは他人のものだった。  この4年間。  たくさんの人を騙し、たくさんの人を巻き込みあたしは最後に捨てられた。  もう誰も好きになんてならない。最後はあたしから終わらせたかったのに、終わらせてくれなかった。  ずるいよ。ずるい。  けれど、愛された記憶があるの事実は無根で、あたしはすっかり涙が出なかった。  涙すら呆れ、あたしから去っていったようだ。  明日も晴れそうね。  おもてはすっかり、真っ暗で、内装の心もとない明かりの中、職人さんがまだ作業をしている。
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