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卑怯者。
「とりあえずさ、野田なら日にち伸ばし伸ばしにして誤魔化せば、そのうちハンター自分で買うんじゃね?あいつんち、金持ちだしさ」
翔太はそう言ったけど。それより、俺の嘘が野田に見抜かれてるんじゃないか?分かってて貸してくれと言ったんじゃないか?……。
そんな事を思ったけど、ついてしまった嘘を、解決出来る案もある筈が無く。
いつもの自動販売機の前で翔太と別れた。
「そうだな、ありがと翔太。また明日な」
帰りたくもないオンボロアパートに帰ると、家の前で大家と優美が、何か言い合いをしている。
「もう何カ月も払って貰ってないよ! どうなってるのよ!! あんたん家のおばあちゃん、お国から手当て頂いてるんだろ?なんで払えないの? 」
腰はかなり曲がっていて、70代くらいの大家だが口調は強く、子供だからと言って甘く見てくれる事なんてなかった。
「ごめんなさい。祖母が帰宅したら伝えますから、今日の所は帰って下さい」
優美が涙目でそう言った。
俺は隠れた物陰から出て行く事が出来なかった。
優美、すまないけど乗りきってくれ……
そう思って息を潜めて物陰に居た。
ずるいのは分かってる。
妹が惨めな思いしてるのに、俺はどうもしてやれない。
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