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不謹慎な願い事。
暫くすると、大家が歩き出すのが見えた。
今日は諦めてくれたみたいだ……。
何も知らないかのような顔で玄関に入ると、優美はケロッとしていた。
「お兄ちゃん!影が動いてたよ」
「え!? 」
どうやら隠れていた事に気がついていたみたいだ。
「なんでこんなに苦労するんだろうね……うちみたいな家庭って、地球にどれだけいるのかな?だけどさ、地球でって想像したら、うちなんてマシなのかな?不幸ランキング何位くらいかな?ね、お兄ちゃん」
優美は笑っていた。
優美は俺とは違って、前向きな性格だった。
父親が違うからなのか、俺には似てなくて、俺はそれさえ羨ましく感じる事がある。
「それとさ、お兄ちゃん!明日あの日だよ」
俺はカレンダーに目を向けた。
赤い丸が付いていた。
そうだ!明日はあの日だった!!
テレビでも話題になっているあの日……。
地球が消滅すると、有名な予言者が言っていた日が来る。
優美は笑ってGOODサインを俺に出した。
俺も同じようにして親指を立てた。
世間はその日を恐れていたけど、俺たちはその日が来る事を楽しみにしていた。
不謹慎かもしれないけど、地球が終わっちまえば家賃を請求される事もないし、オンボロアパートは無くなるし、何より、皆が同じようになっちまえば俺たちだけが不幸な訳じゃなくなる。
──そんな事を、本気で思っていたのだ。
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