淡い期待。

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淡い期待。

 予約席の皿を並べ始めた頃、笹野が隣に来て一緒に皿を並べはじめた。  笹野は野田グループといつも仲良くしている。俺や翔太とは、特に仲良くしていなかった。  あいつらとは反りが合わない。  だけどバイト先ではお互い気を使ってか、たまに喋る事はあった。 「正夫……さっきの話しさ、聞くつもりじゃなかったんだけどお前ん家、そんな厳しい状態なのか?」 「ん?あぁ、別に……」  俺は笹野の目も見ずに皿を数えていた。興味を持たれたくないし関わりたくなかった。  金持ちでお調子者の野田グループにいる笹野の事を、俺は信用していなかったからだ。 「正夫、苦労してるんだな、なんか見直したわ。じゃあさ、野田に言ったゲームの話し……あれ、嘘なんだろ?金無いなんて言いにくいしな。にしても学費自分で払うって大変そうだな……」 「え……まぁ。言いにくいし 恥ずかしかったのもあるし……」  俺は笹野がバカにしてくると思い込んでいたから、思いがけない言葉が来て、素直に言葉を返していた。  別に、誰かに同情されたかった訳じゃない。同情はむしろ大嫌いだ。  だけど、誰かに頑張ってるって思って欲しかったのかもしれない。  お前、頑張ってるよ!そう言われて嫌な気はしなかった。 「ゲームの事さ、気にすんなよ。野田には俺が上手い事言っといてやるわ!きっとあいつも、からかいたいだけだからさ」 「笹野、悪りぃな、ありがとな。助かる……」  見てる奴は見てくれていた。  俺は俺自身が色眼鏡で見られるのを嫌う癖に、同じ事をしていたのだろう。ひとつの不安が消えた気がした。明日、翔太に話そう。  家賃も学費も生活費も……片付かない事は山程あるけど。とりあえず、ひとつずつだよな。
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