212人が本棚に入れています
本棚に追加
「正夫、起きなさい」
聞きなれた祖母の声がする。
俺の目はまだ開かない……
開けたらまた同じ朝が来て、また同じ毎日が始まるんだろ?
「ちょっと!お兄ちゃん!邪魔。炬燵で寝ないでって、いつも言ってるじゃん!」
まだ秋だというのに、うちには既に炬燵が出ている。
別に、気の利いた理由じゃない。うちの炬燵は、年中無休で出しっ放しなのだ。
妹の優美が俺を蹴り上げて、仕方なく重い目を開いた。
あぁ、また始まるんだな、俺のくだらない1日が。
腹はすごく空いていた。だけど食いたくないんだ。
2日前のおでん……。
匂いだけで嫌なんだ、朝からまたかよ。これだけで気が狂いそうな程、嫌な気分になれる。
周りは言うんだ……
ご両親無しでおばあちゃんが1人で育ててくれてるんでしょ?素晴らしいおばあちゃんじゃない!
将来、恩返ししないとね!
は?飯なんて3日に一度、作るか作らないか。おでんや煮物の日なんて最悪だ、3日間は続くぞ?
育ててもらってる?祖母はパチンコ狂いで、飯もろくに無いこの環境が?それでも、施設に居ないだけマシなんだろうか?
──きっとそうなんだよな。
最初のコメントを投稿しよう!