回らないでいいのに回る。

3/4
前へ
/114ページ
次へ
 「正夫、起きなさい」  聞きなれた祖母の声がする。  俺の目はまだ開かない……  開けたらまた同じ朝が来て、また同じ毎日が始まるんだろ? 「ちょっと!お兄ちゃん!邪魔。炬燵で寝ないでって、いつも言ってるじゃん!」  まだ秋だというのに、うちには既に炬燵が出ている。  別に、気の利いた理由じゃない。うちの炬燵は、年中無休で出しっ放しなのだ。  妹の優美が俺を蹴り上げて、仕方なく重い目を開いた。  あぁ、また始まるんだな、俺のくだらない1日が。  腹はすごく空いていた。だけど食いたくないんだ。  2日前のおでん……。  匂いだけで嫌なんだ、朝からまたかよ。これだけで気が狂いそうな程、嫌な気分になれる。  周りは言うんだ……  ご両親無しでおばあちゃんが1人で育ててくれてるんでしょ?素晴らしいおばあちゃんじゃない!  将来、恩返ししないとね!  は?飯なんて3日に一度、作るか作らないか。おでんや煮物の日なんて最悪だ、3日間は続くぞ?  育ててもらってる?祖母はパチンコ狂いで、飯もろくに無いこの環境が?それでも、施設に居ないだけマシなんだろうか?  ──きっとそうなんだよな。
/114ページ

最初のコメントを投稿しよう!

212人が本棚に入れています
本棚に追加