回らないでいいのに回る。

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 ──俺たちに両親は居ない。  母親は優美を産んですぐ、祖母に預けて出て行ったそうだ。  父親は、誰かも知らない。  俺はその時2歳、記憶は何も無い。  それからずっと、祖母と妹と俺の3人暮らしだ。  俺は一番味が染みてなさそうなコンニャクを一口頬張りながら、重い気持ちのままきしむドアを開けた。  この辺りでも珍しいくらい、オンボロ長屋のアパートを出て、1日が始まる。  7時35分。そろそろ急がないと、翔太があの角曲がっちまうな。  翔太はいつも待ち合わせの自動販売機に、同じ時間に来る。  今日は、ギリギリセーフで待たせなくて良さそうだ。
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